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留学記(国内・国外)

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前千葉大学医学部付属病院脳神経外科助教

松谷智郎

 2010年10月より,カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)へポスドクとして研究留学中です.今回は,私の留学の様子を簡単にご紹介したいと思います.

 UCLAは,カリフォルニア州立大学の一つで,西海岸有数の大学であります.キャンパスは,ロサンゼルス国際空港より北へ車で20分程度,サンタモニカとビバリーヒルズに挟まれるWest LA地区に位置し,観光マップにも記載されているような良好な立地を得ております.気候はきわめて過ごしやすく,冬は朝晩冷え込みますが,日中は常に温暖で毎日晴れています.夏は日差しが強いのですが海からの風が冷たく,日陰にいると非常に快適で,一年を通じて暖房,冷房を使用することは数日だけです.さらにロサンゼルスには古くから日系社会が確立しており,TOYOTAやHONDAなど大手自動車メーカーの工場もあります.そのため,多くの日本人が生活しており,日系の店が充実していて,我々留学生やその家族にとっても非常に過ごしやすい地域であります. UCLA

 私は現在,この大学の病理学の一教室である,Department of Pathology and Molecular Medicineにて,Paul Mischel教授の元,研究活動を行っております.彼は脳腫瘍の基礎研究において,ここ数年目覚ましい業績を残し,様々な賞を受賞しており,2010年にはAmerican Society for Clinical InvestigationのPresidentも務めております.現在このラボでは主にGliomaのEGFR variant III mutantを中心として,EGFR-PIP3-mTOR-Akt pathwayとその下流のシグナルに関して研究を行っており,悪性脳腫瘍を専門とする私にとって非常に有意義なLabであります.また,病理学の一教室という性質上,臨床治験評価に参加し,治療前後の脳腫瘍を免疫染色にて評価をするということも多く,Translational Researchの一端を担っていることも,脳神経外科医として有意義であると感じています.

 研究室は国際色豊かで,現在日本人2名,イタリア人1名,カナダ人1名,アメリカ人1名,中国人1名の計6名のポスドクと,MD/PhDコースのアメリカ人医学部生2名(医学部課程の基礎課程2年を修了後,先に3年前後をかけて学位を取得,その後臨床課程2年を経て医師になります),PhDコースの中国人1名,他にUndergraduate(医学部志望の他学部の学生が,面接などで有利なため研究の手伝いをします)の学生が数名研究を手伝っております.

 このLabではGliomaという共通テーマはあるものの,各自が異なるテーマを持ち研究を進めていきます.私の場合も,まず留学してから1カ月,文献を読んでテーマを決めるように指示され,何回かのDiscussionの後,一つの仮説に絞って研究中です.研究手法や方針は各自で考えて行うため,特に日々,あれやこれやと指示されることが無い一方,結果を出せるかどうかが個人の力にかかってくるため,違う意味でのプレッシャーがあります.これは最初にPaulから直接言われた,「僕が指示するのは簡単だけれども,研究者は人に言われて動いても意味が無い,自分で考えるからこそ成長するのだ」という方針に基づいています.日本人の属するラボの中には,完全にtop down方式で研究を指示されるところもあると聞いていますので,このような自主性に任せる環境はむしろ歓迎すべきものだと思っています.

 実際にラボで研究を始めているといくつかのことに驚かされました.当初,アメリカ人は平日の9時から5時までしか研究しないのかと思っていましたが,実際は若い研究者は遅くまで研究しますし,週末も実験をしています.確かに他の職種は9時5時の傾向が強いようですが,ことポスドクとなると非常にハングリーです.その裏返しに彼らには上への道が日本に比べると,かなり開かれています.もちろん,ポスドクをずっと続けることは不可能なので後が無いという見方もありますが,アメリカ全体で寄付なども含めて研究へ流れるお金が多いこともあり,多くの研究者が成功(地位,金)をモチベーションとして頑張っています.競争社会の良い面だと思います.事実,私が来てからすでに2名が,自分のラボを立ち上げて出て行きました.

 この人材の流動性も,アメリカの研究力だと感じます.良いラボというのは,ポスドクにとっては,十分な資金力と次のステップにつながる研究結果を出せるところであり,すなわち過去に在籍したものが独立して良いポジションを得ていることが重要です.そういうラボには,必然的に優秀な人材が集まってきますので,良い研究,多くの研究資金の獲得が容易になります.そしてまたそういった優秀な人材が良いポジションに移ってもらうことで,優秀な人材が入ってきて,そのラボが常に活性化されていきます.人の循環が良い意味で行われていることがラボの運営に重要なようです.事実,その後に採用されたポスドクはそれぞれ,我々のラボには無かった技術,知識を持っており,それをすでに自分の研究に生かしています.

 また,これは欧米人特有な面もありますが,教授も含めて交流網を広げること,維持することに力を注いでいます.日本の研究者,医療者のつながりは多くの場合,学閥などによって生じる受動的な関係が多く,むしろコネとしてネガティブにとらえられるものもありますが,こちらは先ほど書いたように,人材が流動的なため,学閥はあまり意味がありません.むしろ,個人同士の関係に力を注いでおり,能動的につながっているような感じがします.それが結果的に研究の幅を広げ,活発なdiscussionにつながっています.

 さらに,こちらの研究者のプレゼンテーション能力は圧巻です.学生の発表でも下手な日本の学会発表をはるかに凌駕しています.よく言われているように,こちらでは優秀なところは見つけてもらうのではなく,見せるものなので,「優秀」な研究者とは「優秀」であると見せつけられる研究者でもあるのです.英語のハンデも含めて,いかに彼らに近づけるのか毎回ラボでの発表の時は苦労します.

 他にも感じることは多々ありますが,こちらで研究をしていて日々,大いに刺激を受けています.結果は全然出ていないのが最大の懸念事項なのですが,実際にアメリカの最先端の研究室に所属することで,今まで想像でしかなかったものが実感できるようになったことも収穫の一つと自分に言い聞かせています.

一方,UCLAには多数の日本人研究者が在籍しており,そういった方々と知り合えることも有意義なことの一つと感じています.特に,たまたま脳神経外科医が5-6名いるため,定期的に集まって親交を深めています.専門は様々なのですが,ちょうど30代半ばから後半にあたる同世代の医師ばかりなので,時に刺激を受け,時に愚痴りあい,楽しい時間を過ごしています.

 日常生活面では,日系スーパーだけで3店も車で20分以内にありますので,予算を気にしなければある程度のものは揃えることができます.私の場合小さい子供もいますので,これは非常に助かるものです.個人的にはアメリカのスーパーの方が,こちらでしか見ないものが多く好きなのですが,やはり食品は日本食が体に合います.ちなみに,アメリカのスーパーのレジに並んでいるときに,アメリカ人の購入しているものを見ていると,大体コーラ,冷凍ピザ,ビール,フルーツ,シリアルの大量買いです.みんな巨大で安いです.(コーラは12缶で4ドル,ビールも同じくらい)

 週末はラボにいくことも多いですが,できるだけ遠い日本からついてきてくれた家族に時間を割くよう心がけています.子供が小さいのでまだ行っていませんが,ディズニーランド,UFJ始め多数の遊興施設があり,遠出をすればLAS VEGASへの観光もできます.ただ非常に感動したのは公園の充実ぶりです.こちらは住宅街の周辺に大概大きな公園があります.多くは芝生が張ってあり,遊具も豊富で,週末の公演は家族連れだけでなく,日光浴をする人,犬の散歩をする人で賑わっています.温暖な気候と相まって,非常に穏やかな週末を簡単に過ごすことができます.絵にかいたようなハリウッド映画の週末が,そこに確かに存在していることが新鮮でした.

 まだまだ伝えきれないことも多いですが,日本では経験できない貴重な時間を過ごしていることを日々実感しております.私はやがてはまた,日本で脳神経外科医とし,医療に携わっていきますが,今回の留学が決して,ただの「海外生活体験」にならないよう,これからも努力していきたいと考えております.

 

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