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千葉大学 脳神経外科|千葉大学大学院医学研究院 脳神経外科学

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水頭症と正常圧水頭症

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千葉大学医学部附属病院 脳神経外科  講師 村井 尚之

水頭症(すいとうしょう)

図1.髄液の循環する様子

図1.髄液の循環する様子

1. 頭の中は

 硬い頭の骨の中には柔らかい脳が水に浮いています。お豆腐のパックの中に水が入っているように、水が衝撃から守ってくれています。この頭の中の水は「髄液」と呼ばれ、絶えず循環し新しく入れ替わっていきます。髄液は主に脳の中で作られ、脳内の血管で一部は吸収され、多くは脳の表面にまわってでてきて太い静脈や脳神経・脊髄神経周囲のリンパ管などの中に吸収されていきます。

 

2. 水頭症とは

 髄液は循環していますが、その途中で流れがさえぎられたり、吸収が悪くなったりすると頭の中に髄液が余計に貯まってしまい脳の働きが悪くなります。この状態を「水頭症」といいます。症状としては慢性の場合は頭痛や歩行が不安定になったり、物忘れが目立つようになったり、尿失禁がでたりします。急性の場合は激しい頭痛と嘔吐に引き続き意識障害やけいれんなどがおこり生命の危険になります。

 

3. 水頭症の治療は

 水頭症の治療は貯まった髄液をお腹などに管を通して流してあげるシャント術と、脳の中に新しい髄液の出口を作る第3脳室底開窓術があります。当院では水頭症の原因によって最善の治療法を選択しています。

 

図2.3つのシャント術の方法

図2.3つのシャント術の方法

4. シャント術とはどんな手術?

 シャント術とは今日最も標準的な水頭症の治療です。髄液の貯まった脳室または脊髄腔にカテーテルを挿入して、腹腔までカテーテルを導く手術です。当院では図2に示す3つのシャント手術の中から最善の方法を選んでいます。最近では腰椎腹腔シャントを選択する方が増えています。腰椎腹腔シャント術では腰背部ほぼ正中に約2cmの皮膚切開を行いそこから脊髄腔に管をいれます。次に腰部側面に2cmと腹部4cmくらいの切開を行います。腰部正中から側面に向けて流量を調節するバルブを皮下に挿入し、背部で脊髄カテーテルとつなぎます。更に皮膚の下でカテーテルを腹部まで導き、腹腔の中に20cmくらい挿入します。麻酔は、脊髄麻酔(腰椎麻酔)と局所麻酔の併用を予定しています。
流量の調節は磁石を使って体外から行えるので、手術の後、何時でも変更できます。バルブは電磁石で調節するので、その場所に直接磁気枕などの磁石を当てると、設定がずれてしまうことがありますので少しばかり注意が必要です。

 

5. 第3脳室底開窓術とはどんな手術?シャント術との違いは?

図3.非交通性水頭症の様子

図3.非交通性水頭症の様子
矢印の場所が開窓を行う第3脳室の床です。

 シャントでは管が詰まってしまえば急に具合の悪くなることがあったり、流量の調節がうまくいかず脳と骨の間に血液がたまってしまったりする場合があります。第3脳室底開窓術は神経内視鏡を用いて第3脳室の床(図3)に小孔を開けて風船着きのカテーテルで拡大する手術(図4)で、シャントの管などの異物を頭の中に残さず、より生理的な髄液の循環状態にすることができます。第3脳室底開窓術はこのようにメリットも多いのですが、神経内視鏡という新しい器具を用いるので、慣れた人にしていただくことがとても大切で、当院は100例を超える経験があり安心して手術を受けられます。

 

図4.第3脳室底開創術
まず小孔をあけて(a)、バルーンで拡大します(b)。開窓がうまくいくと脳底動脈を見ることができます(c)。

図4.第3脳室底開創術 まず小孔をあけて(a)、バルーンで拡大します(b)。開窓がうまくいくと脳底動脈を見ることができます(c)。

 

 

正常圧水頭症

人口の高齢化とともに要介護の原因として正常圧水頭症が注目されています。
当院では近年、正常圧水頭症に対して年間30例以上のシャント手術を行っています。

 

【診断のポイント】

概念:痴呆、歩行障害、尿失禁の臨床症状のいずれかが存在し、脳室は拡大しているが腰椎穿刺時髄液圧は18cm水柱以下で、髄液シャント手術で症状の改善が期待できる症例を正常圧水頭症と言います。

分類:くも膜下出血、髄膜炎や頭部外傷等に続発する続発性正常圧水頭症(70~80%)と、原因のはっきりしない特発性正常圧水頭症(20~30%)とに分かれます。特発性は高齢者の1%程度にみられる頻度の高い疾患ですが、先行する疾患がないので診断にいたらない場合も多く次の2点に注意することが大切です。

1
この数ヶ月以内に比較的急に歩行障害や痴呆症が進み、CTで脳室拡大を認めるが、障害を説明する脳血管障害や頸・腰椎、膝などの病変がない場合、本症を積極的に疑う。
2
症候から本症が疑われ、CTまたはMRIで脳室の拡大があり、加えてシルビウス裂の拡大や髄液排除試験が有効ならシャント術の適応があると考えて良い。

 

【症候の診かた】
1
痴呆、歩行障害、尿失禁が3徴候と言われているが、歩行障害で初発する場合が多く他の障害のない場合もある。歩行障害は、振戦を伴わない小股歩行で、やや開脚のゆっくりとしたものが多い。
2
痴呆は記銘力や集中力の低下、無気力・無関心といった覚醒レベルの低下が原因である。
3
初期から尿意を伴わない真性の尿失禁は少ないが、歩行障害とともに我慢もできにくくなる為トイレに間に合わないという切迫尿失禁はしばしば認める。

 

【検査とその所見の読み方】
1
CT・MRI:側脳室の丸みを帯びた拡大を認める。シルビウス裂の拡大と高位円蓋部の狭小化、脳梁角の鋭角化を認める場合はシャント有効例が多い。
2
髄液排除試験:18~20Gの腰椎穿刺針で20~40mlの髄液を排除し、数日間ほど臨床症状を観察する。改善例ではシャント有効例が多いが、非改善例でも有効例があり、他の検査結果を参考にする。
3
CT脳槽造影:以前は良く行われていたが特異度・感度ともに低く、今日では行われなくなっている。

 

【確定診断のポイント】

水頭症症状があり脳室の拡大があるが髄液圧正常で、①典型的なMRI/CT所見、②髄液排除による症状または脳循環代謝の改善をみる、③髄液吸収抵抗高値のいずれかを認める。

 

【鑑別すべき疾患と鑑別のポイント】
  • アルツハイマー病:徘徊や人格の障害が目立ち歩行障害は末期まで認めないことが多い。脳室の拡大に加え脳溝も拡大していることが多い。
  • 脳血管性痴呆(Binswanger病、多発性小梗塞など):しばしば正常圧水頭症に合併する。髄液排除試験陰性。脳血流は低下しているが酸素摂取率の上昇はないことが多い。
  • パーキンソン病:薬物療法によく反応することが多い。正常圧水頭症では固縮を認めても典型的な振戦を認めることはない。時として正常圧水頭症に合併することがある。
  • 慢性硬膜下血腫:時に症候は酷似する。CTあるいはMRIで血腫を認める。

 

【なかなか診断のつかないとき試みること】
1
持続髄液排除試験:腰椎ドレナージ回路に抵抗付きの一方弁を挿入し、自由に歩行させながら3~4日間臨床症状を観察する。
2
髄液負荷試験(infusion test):腰椎穿刺を行い、くも膜下腔に生理食塩水を注入し一定の計算式から髄液の吸収抵抗値を算出する。これが高い場合シャント有効例が多いが施設ごとに基準が異なるので施設間の比較が難しく経験の多い施設内でのみ有用。当院ではおよそ200例の経験があり有用性が確立している。
3
脳血流(CBF)の測定:アルツハイマー等との鑑別が期待できるが手術の効果を予測するのは難しい。

 

【治療法】
  • 治療効果が予想される症例を速やかに診断し、脳神経外科にて髄液のシャント手術を行う。現在では脳室腹腔シャント術が最も普及しているが、当院ではより非侵襲的な腰椎腹腔シャント術を選択することが多い。
  • 第3脳室底が膨隆した一部の正常圧水頭症(Blake’s pouch cystなど)では神経内視鏡による第3脳室底開窓術が有効。

 

【さらに知っておくと役立つこと】
  • 局所の脳溝の拡大は、脳萎縮ではなく局所の髄液循環障害による場合があり、シャント術無効の因子とはならない。

 

 

 

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